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夜行日和

短歌まとめ

だれも助けてはくれない

強く雨降りだす音に口中のクリームパンはかき混ぜられて

白い壁話しかけても話しかけても答えないなにもかも夜

シェアパックぐらいがきっとちょうどいいきみへの愛を食べて生きてる

カルピスとコーラを混ぜる割合は一対一と決めている春

ロックンロールになれなかった花束を抱いて海への近道を行く

新聞に載ることのない猫の死を何度も見届けてきた国道

助手席のリクライニングの角度会う度変わる人、変わらない人

生きている意味ってほんとにあるのかなメルティーキッスは期間限定

音楽を食べて生きてる怪物が泣いているのは春が来たせい

いま風になりゆく鳥の心臓が春の星座の角度をめざす

折り畳み傘しかなくて戦えない人にやさしく春雨落とす

深く吸うことができれば強く吐くこともできると思よ、きっと

かみさまと言葉がちがうことだけが気掛かりそっと目蓋を閉じる

また次のステージに上がるときのような気持ちでひとつ縁石登る

ああそうか、あの子にとってぼくなんかRPGの村人10だ

王様の指令のように降ってきて色褪せた街を照らす春雷

どうしてもだめなら別々にあるくあなたは朝へわたしは夜へ

選択のできないシミュレーションゲームのように地球は回り続ける

渦巻きの最初の位置に立ったとき誰にも説明されない最後

涙とは勝手なものと思っていたこらえられると知るこの日まで

トラロープに囲まれている菜の花が工事看板の彩りとして

もっとずっと月がきれいな日があった美術館などなくてよかった

スーパーで半額の豚肉を買うひとりできた道ひとりで帰る

昔から割り算が苦手だったから割り切れているフリだけ上手い

モーニングコールのようにやってくる春がハモニカ吹きながらくる

先生が泣くクラスメイトらが泣く騙されちゃだめ騙されちゃだめ

使い捨てカメラで撮れるだけ撮ったプリクラよりも鮮明な友

最後の日友だちはもう来なかったピッチの番号だけが残った

ハルシオンでは死ねないと知ったのはいつだったかな。高一の冬?

いつも今から始まってゆく祈りしづかにあすの綻びの音

ぼくたちは進む速度は同じでもすれ違わない轍になろう

じつはぼくの本体黒縁の眼鏡外せばきみの顔も見れない

夕暮れが始まっていくゆずマーマレードの瓶を開けたその時

透き通る雨が硝子の心臓を削って創る七色の骨

この空の間違えている可能性についてあなたの推論を聞く

野良猫の宇宙のような背を撫でてきらきら星を口ずさむ子よ

ほしふればざんこくショーのはじまりにぼくらのまちははくしゅかっさい

ぼくたちはともだちだよね満月が欠けても歯車が回っても

文学の退廃的な響き満つ少年少女のかの学舎は

人生のほんのひとときでもそれは夜を煮詰めたような苦しさ

青春について書かれた文章に万年筆で書き足すさよなら

どうしたら首を絞めても死なないでぼくの言うこと聞いてくれるの?

わたしにはわたしの夢があるんだよきみにかまっていられないほど

絶妙な角度に設置してるのでそのりんごには触らないでね

死体さえなければもっとマシな部屋なんだよほんと電気消そうか?

さようなら、明日きみとは十字路で会うかもしれない、会わないかもしれない

暖を取るものがなければこの本を燃やしていいよ遠慮はするな

こうやってしずかなよるもいいでしょうみみなりはほしのふるおとのこと

明日までそのままにしておくきみの指の角度を焼き付けた脳

親友のO(オー)に渡して欲しい物遺書の一番はじめに記す

今すぐに咲いてほしいというぼくと春を待ってる人のやさしさ

だれも助けてはくれない教室で鳥になったり魚になったり

目蓋にはほんとのことが書かれてて目を閉じたときだけ見られるの

わたしたちほんとの愛を手にいれる覚悟はとうに出来ているのに

目を閉じてまた目を開ける運命は光りつづけることを選んだ

ひとつだけ残ったりんご籠の中きっと夜中に手足はえてる

2017.3.1~3.31

銀色の雨

三角をどんどんどんどん繋げたらうちのシャワーカーテンに続く

猫のいる気配だ日暮れの自販機の裏とかブロック塀の間に

近づけば逃げていってしまうところとかきみらはほんときぼうみたいだ

四時になるから帰って歌いましょう あなたも一緒に歌いましょう

食べかけのカップケーキを投げ捨てる 感情を捨てる覚悟で投げる

ほんとうをほんとと略すほんとうのうにほんとうが隠れているから

こうやって忘れ去られていくことも小気味がよくてわたしは好きだ、

こんなもの捨てちまえよと言われてもとてもとても金色なんだ

ぼくたちは複雑な脳を持っているらしいおかげでなにもわからない

コンビニが建ってその前その場所がなんだったのか思い出せない

ぼくたちは取り残されてしまったんじゃないだろうなこのまひるまに

太陽に当ててやろうか風は少し強いがぼくは
ぼくを押し出す

静かなる発泡スチロールの箱よアイスクリームを内臓として

衣擦れの音も立てずに生きるには猫になるしか他にあるまい

眠いので銀のアラザン投げつける相手をときどき間違えている

アラザンのアラザンによるアラザンのために降らせる銀色の雨

あの人にぶつけるためのアラザンを抱きしめてたら冬が終わった

一緒には居られなくてもいいんだよどっかで元気にしてたらそれで

誰でもいいからしろくまのぬいぐるみと手を繋ぐさぁ夜だ踊ろう

らららららひかる輪になるひらがながあるならそれはららららららら

この皮膚のどこかに切り取り線がある日本製であるのは確か

一回だけ倒れておこう天井を見よう誰かが起こしにくるまで

じゃあぼくは日の沈む方に帰るねいつでも死ねる月が明るい

待ち合わせしているような振りをしてテーブルの下で脈を数える

明るくて五月蝿いフードコートでは隣が大体家族かカップル

鉄板に載った牛肉ひたすらに無言で食べる真顔で食べる

手洗いの蛇口が子供用なのでがに股で20センチ沈む

完全にまっすぐにはなれない僕よ ひとつだけ望みをきいてやる

透明なウサギを飼って暮らそうよギターケースに入れておこうよ

前髪を切りすぎたとか言い訳をしながら撫でるおでこの丸み

閉まってるシャッター見ると叩きたくなるんだ多分これは遺伝だ

玉子焼き甘いやつしか食べたことないから甘いのしか作れない

春風と言えるかどうかわからない風がばよえ~んと言いながら過ぐ

もっと簡単に狂ってしまえたらいいのに狂ってしまえしまいた

2017.2.16~2.28

明るい死体

並んでるかなしみに名前をつけようか行列はずっと続いて


光だけ欲しいだなんてわがままねおんなじ量の闇をあげるわ


データバックアップ用にと脳みそをもうひとつ買い"ディー"と名付ける


おもしろいことなんか、ほんとにないよ。魔法が唱えるためにあっても。


お揃いのティーカップが恐ろしいやたらカラフルな夢を見ていた


空き瓶に金平糖をいれてほら、くる人くる人にほら、ほらと言う


いとしさの礫になりて降る夜の亡骸を抱き野道を歩く


月光に取り残された9四歩がらんと暗き盤上に笑む


なんとなく扉を開けるなんとなくきみが歌っているのがわかる


ああ光らなくなりどのぐらい経った小さい星のすみっこで待つ


チョコレートまみれで小麦粉の中に埋もれる/きみに窒息


ベッドには透明な鯨が住んでてぼくの布団を膨らましてて


この部屋は溢れた泡でいっぱいだひとつひとつに知らない漢字


すれ違うだけだった人も来世では深海魚になりまた会いましょう


飛んでいくために広げた翼だが邪魔だといわれ静かにたたむ


飛びかたを忘れた羽根も退化した時おり腕を大きく伸ばす


この骨は退化した翼の跡よそれを使って傘を開くの


なんでこんなに暗いのか、わからない、道をどうして、ひとりで、歩く


耳たぶに触れる10年前開けたピアスの穴はもうここにない


雨に立つカーブミラーの裏側に63年8月とあり


銅像になってしまったおじさんがずっと少しだけ口を開けてる


夕暮れの息苦しさに顔を上げペットボトルの海をひとくち


なにもかもやわらかいのにぼくだけがちがう形の棺を探す


幸せが落ちているかもしれなくて床の凹みをじっと見つめる


懸命に風はそよそよ揺するのにぼくらはよそ見ばかりしている


遠ざかる、釣り人、カモメの嘴、風が走りだすのを待てない


傾げてる首、その裂け目からきみの、新芽のようなもの吹き出して


薄暗いスタッフロールぼくたちのメランコリックの感電死体


15時。退勤じゃないドアを押す。わたしの胸がどかんと鳴った。


異世界への扉ならもっとそれらしくしてなきゃ駄目と先輩が言う


右腕が痺れてる、この前きみが、バケツに海を拾ってきてから


夢の中だけでいいから現れてわたしの光になってください


何もかも無かったことになるのならぼくは角砂糖300個食う


どうせなら晴れた日がいいどうせなら明るい死体になろうと思う


帰路につく天使のふりして途中まで一緒に帰らないって誘った


人になるなりかたなんか知らないさぼくはチキンを頬張るけものだ


噛み砕くチキンがちょっと生ぬるい、生きてるみたいに生ぬるい


致死量の酸素を摂取して眠る痛いから生きてるってわかる


ばりばりばりなにかが裂ける音がして布団の中のブラックホール


貝殻のベッドで眠り明日の朝、女神誕生ごっこをしない?


だって今日が来るのは初めてなんだからなんでもうまくなんてできない


ひとりでもさびしくはないけどそれをうまく言葉にできるだろうか


離れても生きていること返信が来ない葉書を何度でも書く


愛しても愛さなくても消えないよ一緒に居なくても光ってて


ゆっくりと忘れていくねそのうちに居ないってことも忘れるだろう


2017.2.1~2.15

すべて正解

暖かいことと光っていることは似ていて回り続ける木馬

月影に隠れて誰も撃てないわ(明朝体の仲間を狙え)

きみの住む惑星(ほし)はどんどん遠くなる時空を越えて殴りに行くよ

さんかく座銀河まで飛んでいくよりはずっとぼくんちのほうが近いじゃん

転落死してしまうほどはしゃいじゃう宇宙生活二年目の夜

最近の流行りは地球のカクテルの名前のついた宇宙猫らしい

マダムロゼ、きみも画面を観てごらんあれがきみの(ぼくの)ふるさと

乾上がった心に水をやりませう(ずるくなくても生きていきたい)

何もかもなかったことにはできません(わたくしは此所に此所におります)

心臓は小さな砂漠と申します(わたくしがそう呼んでおります)

その先は立ち入り禁止に御座います(夢を見るのは貴方の自由)

勇気ある乙女は足を止めません(恐ろしいのは皆同じこと)

守るものがあるから強くなる人と重荷に耐えきれなくなる人と

光指すほうへ恐る恐るゆく「なんだお前か」「来たかお前も」

あなたのは軽そうだよねと言われてもぼくの荷物はぼくだけのもの

一駅ごと一駅ごとに背を伸ばす無機物の銀色の輝き

日本語で車掌に話しかけられるちゃんと日本人に見えてる

マンション群抜けて突如に住宅街-突如に学校-突如に工場

お迎えのある人はみんな嬉しいねぼくは30分後の汽車です

「難波」なぜ難しい波と書くのだろう ただ行き過ぎるだけの人波

朝食は茶碗一杯の白飯と味噌汁、関西弁、関西弁

「次の電車はすぐ来ます」車掌の言葉を信じて待つ すぐ来た

きみが海なら不時着をするときの飛行機の形を次から選べ

夥しい数の郵便受けがあるどれどれひとつ開けてやろうか

朝焼けに選ばし者のように立ち犬におしっこさせている人

深く沈むためだったよねぼくたちが心臓の音数え合うのは

メリヤスで編んだ身体をくっつけて二人でひとつの形をつくる

ぼくたちを真空パックにしてください。永遠に開けないでください。

ぼくらには鳴らせない音五線譜の彼方一番星が鳴りだす

書き置きにふさわしい筆圧探る「今夜パラシュート工場で待つ」

なにもかもうまくいかないきみだけど生きているならすべて正解

どんなものにもあるストーリーきみと選んだというただそれだけでも

焼きたてはおいしいのにな萎んでくホットケーキのようにうつむく

寒いしか言わない友は寒いしか返さぬ我と道を急いで

延々とおなじところを回り続けている腕時計もわたしも

「天国にいる」と言われてを空を見る 眩しくってなんにも見えない

人間は漂白剤に浸けましょう 三週間で大人になります

なにもかも捨てて歩けば軽いかな ちょっと待ってよ、それは要るやつ

涙って零れないんだ流れてくだけなんだって気づくのは夜

午後三時、空は晴天、矢印は成層圏を貫く角度で

まろやかに眠る右脳は溶けだして裸足で駆ける銀河の背中

闇という闇ことごとく撃ち破るスペシウム光線がぼくにも欲しい

今日も過去、明日も過去になっていく 透明になれ わたしの鱗

完全と不完全との間にてどちらでもないものの魚影よ

沈む青の飛沫を食べて生きているならぼくたちは泳ぎだすべき

2017.1.15~1.31

凍った惑星(ほし)

近くでは分からないのか離れたらきみの銀河はとても綺麗だ

ぼくたちの命を削る分度器の角度は原始より変わらない

虹だろうか いや、シャングリラ いや、桜 いや、モザイク画 いや、あれはブランコ

破れても力いっぱい震えてる 氷点下の流れ星たち

ぼくはぼく自身の避雷針であり電気を逃がす靴下の穴

脱水中二層式洗濯機を覗く人「何が見えるの?」「何も見えない」

ぼくたちが我慢をしてもしなくても生殖のために生きなくてよい

自分あてに残した覚え書きなぜか哲学めいている寒の入り

おそろしい声ばかりしてひかってるものすべて雨、胃が荒れている

あの人はぼくの凍った惑星(ほし)が好き。おしゃべり/おもちゃ/おしりが冷たい

いつまでもいつまでも工事中の夜が続けばだから泣きたくもなる

公園に埋めた心臓とマスカラ愛していたから殺してしまった

新品のフライパンで鮭を焼けそれは神様からの命令

冷たくて涼しくてもうすかすかで指のすき間に見えるあなたは

裏返ることのないまま青春が終わったひとりでB面を聞く

手の甲を噛みちぎるのはこわいからよだれを壁になすりつけてる

こんな全然おもしろくないぼくをのど飴あげる人に選ぶの

ラーメンが食べたいどうしたんだろうぼくの電気は付いたり消えたり

ぼくのじゃないからぶんぶんぶんぶん振り回す銀色の飛行機の置き物

そうそうぼくぺらぺらなんだもしかして月もぺらぺらかもしれないよ

ハンガーが足りない脱ぎ捨てた昨日たちが死体のように打ち上がる朝

この間、きみに左利きなの、と聞いた気がしたけど夢だった

え、そこで?!というところでエンストをし続けているのかお前は今日も

あ、流れ星、ではなくて未確認飛行物体の白いマフラーだった。

特別なことだと思いたくないしメールの返事は来なくてもいい

アンパンチ アンパンチ アンパンチ アンパンチ アンパンチ (濡れて力が)

温州の甘いやつだけより分けてあとは腐っていってもいいよ

なんなのかよく分からない虫が飛ぶ 払う (よかったほんものだった)

人びとが指さすそっちへ行けということかそれとも未来へワープ

自転車が一台駐輪場にありたったひとつで成り立っている

ぼくの愛した血と肉と生臭いきみの目玉がまわる晩餐

半分は透明で半分は青。僅か1%がぼくら。

左目はぼくの海なのごめんなさい。信じてたからびりびり破く。

そうやって道は分かれていくんだな 急に止まれの看板がある

賢さの種を食べればきみのことわたしのものにできるだろうか

止まれって言われて素直に止まってる場所で素直にシャッターを切る

幸せになってほしいと言われてる気がした 気がしただけでよかった

金縛りにあう直前にやってくる聖歌隊と赤い渦巻き

キーボードの海を漕ぎだす茶碗とかマグカップとかカレー皿たち

さむい日は布団のなかで羽根をもぐあしたはちょっと低く飛ぶのだ

透明な鱗の一枚一枚に書いた水性の愛が溶けだす

パンパンのリュックを背負って歩いてくちぎった夢を目印にする

窓に照る渇いた唇がぼくに生きろと言ったサービスエリア

星の代わり、ネオンの代わりに光る、ぶぶぶ文学を追え、宇宙船

置きっぱのギターが教えてくれました深呼吸することの辛さを

2017.1

ロングロングスリーパー

ネガだけを集めてぼくだけが住める国を造ろう 黒、黒、黒、黒、

録音はしないで地獄に落ちるから ぶつかっていくこのリフレイン


ぬるぬるのハンドクリーム塗りながらトースターとトーストの間に座る


スプーンもフォークもナイフも要らなくて目玉の一個しかない鳥よ


日本地図のかたちのティッシュをばら撒いて部屋中が日本の夜明け


血管をつたっていったストロベリーショートケーキ、甘くて、無風


友だちに借りた完全自殺マニュアルに勝手に赤線を引く


きみ史上、この扉を直したやつがぼくでありたくて扉を直す


ときどきは振り返りつつ、足下を確かめながらずっと歩いた


だれもいないときにちょっとだけ話す、昔話がしみじみしていい


電子レンジよりもちょっとだけ早く、終わりの合図を止める訓練


生まれてから最初の十五年、その後の十五年、それからの十五年


もう少しいい部屋に住みもう少しいい人になる予定のまま死ぬ


もう少し自分を好きじゃなかったら自分が嫌いと言わなくて済む


住み慣れた町を離れられずにいて生ゴミの日は忘れずに出す


くまのぬいぐるみの棺桶作るため牛乳パックを集めています


湿気てるマッチを一所懸命にこすり続けるような人生


がま口をぱくぱくさせてみたら、ああやっぱり光が欲しいのだろう


波音のようにあなたがぼくの名を呼ぶのでうれしくなってしまった


生きていることに初めて気づいた日、父はパチンコに行っていました


花札と麻雀を小学生に仕込もうとして徹夜した父


水溜まりの中がほんとの世界かも 行ってきますは言わずに行くよ


ぼくたちはロングロングスリーパー 死ぬまで夢を見続けている


"制限のある自由ならこちらです" "制限のない自由はこちら"


死にたみの中で向かい合うふたり、陽は芝生から芝生へ移る


今日の朝、カラスがつついてたやつと同じ弁当を買ってきて食う


大丈夫、二割引いたらこの中のひとりはいないことになるから


友達と飲んでそのまま「泊まってく?」って言われることが自由だったね


走り書きの名前が星に見えてくる 星ってこんな形だったっけ


ただの落下物だった頃にもどりたい 服もお菓子もなにもいらない


ひとりではできないこともふたりならできるし何度もあやとりを取る


会ってただ、言いたいのです 会いたいと言わないことは強がりだって


軽四で泣いたね夜明けが来ないこと祈っていたね二つに折れて


パトカーが通るたんびに「隠れて!」と叫ぶうなじが夜に浮かんだ


髪を染めヒールの高いショートブーツ、デリヘルほんとはやめてほしい


トラックの運転手という男とは、あれから上手くやっていますか?


燃料は夜の街角 満タンになるまで歌を歌いつづける


人間の足はいらない ぼくたちは夢の中では泳げるだろう


猫ばかり描かれたカップにコーヒーを淹れ光より早く走るよ


ほんとうのことはほんとはもういいの 毛布に身体を包んでしまう


この窓は閉ざされるため世界から切り離すため壊されるため


思い出の中だけで咲く向日葵の柄の黄色いシルクのスカーフ


骨を持つ生き物として手を繋ぐことは義務だと思いませんか

2016.11~12

ガスマスクの女

オルガンの音がしていたことがある、実家のわたしの布団だけの部屋


もう一度青春が来たときのため取りて置きたるパンクファッション


標本のような青空見上げてる箱庭の中のカフェオレボウル


表札がないからとっておきの名をつけようここがペガサス座です


安ピンでつついて膿を出していく そうしてぼくは首だけになる


細長い、更衣室にて喜びのあまり踊ればカニ歩きになる


雨の日の白鳥けふもなにひとつ異常はないという顔でゆく


水瓶座に産まれて深いかなしみに気づかれないようそうっと泳ぐ


なにもかも光ってみえる 銀色のドアの取っ手を磨いてるとき


眼鏡の中+眼鏡の外=世界の空はいつも二層だ


永遠に美しくあれ、永遠が永遠で無くなるくらい、黒


ウインナー、ぜんぶ火傷するまで焼きたい!欲望のまま一袋焼く。


この黒のこの塗り方が好きなんです、嗚呼、花びらがぱっと咲いて散


灰色の鳩は飛び立ち質量の重いものだけ地球に残る


母親に気づかれるようパンジーの花をむしって土に埋めてく


ねぇきみの投げたエクスカリバーがあばらに刺さって抜けない助けて


秋口にさっと羽織れる伝説の鎧こときみの薄いカーディガン


熱量はそれぞれ違うはずなのにぼくのハートはひとつしかない


クリームの何層もあるミルクレープ剥がすみたいに覗く12月


飼い主に脱いだ下着を掛けられてボイパし始めるウォーターサーバー


息をするみたいにInstagramするTwitterするFacebookしない


500円ぐらいは見ずに使えるし大人になったとみんなが言うし


マネキンがそればかり着る 都会ではこんなん流行ってますけど、何か


半額のシール貼られたお刺身と三十分の同棲をする


故郷には返れなかったカカオ豆と珈琲豆がぼくの中で会う


"Amazonのほしいものリストがガスマスクの女に会うとラッキー"


人間を、にんげんと、にんげんは、にんげんのにんげん、にんげんがにん


フライパンにはフライパンのフライパン生があるよね、恋も、悩みも

2016.11