夜行日和

短歌まとめ

ハンバーガー

うつくしい色のインクの匂いしかわたしの手からしませんように

ざわめきに埋もれて歩く昼食のハンバーガーの切れ端のように

昨日から虫歯がとても痛むので食べやすく切った愛をください

信じてた悲しみだっていつまでもいっしょになんていてはくれない

この外の世界と繋がっていることの確認のためカーテンあける

かけちがえた釦のようにもういちどはずしてとめられないこころたち

カチカチのパン

こまかい雪混じりの風が吹いているあの世もこんな寒さだろうか

人間は甘酸っぱくてかなしくて七という字の腸の短さ

あの人がなんでもないと言いながらモーツァルトを聴いてる夕べ

忘れてはいけないぼくはだれからも愛されないし必要でない

水槽のうえにちいさな星がでて食い付いてみたらカチカチのパン

茫茫とちいさきからだちいさきめでまだあのころを漂流す腸(わた)


パラソル

息をとめそっとあたりを見渡せば生き生きとした吾以外なり

ユーミンの曲がかかって顔上げてみれば車は海岸線ゆく

殺された檸檬が酸っぱいそれだけで自殺未遂をしたくなる朝

だれかの忘れたパラソルの水色の泉触れたいふれたくない

ラヂオから染みだすRCサクセション静かに雪が積もるベランダ

空き缶は空き缶でしかないけれど空き缶になる前かっこよかった