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夜行日和

短歌まとめ

ひなたぼっこなう

残飯になったばかりの弁当の蓋に当たってちゃんと鳴る雨


一人ランチ オムライスの上のトマトケチャップの酸味にむせる


できるなら働きたくない「ひなたぼっこなう」しか言わないbotになりたい


銀色のかまぼこ板で直接は言えないような話をしよう


同情でいいから優しくしてほしい 今だけぼくを見ていてほしい


雨傘雨傘雨傘雨傘コスモス畑がひかっている、ぬかるみに


そう、あたしが、あんたなんかと結婚した女の、娘だよ、まいったか


一匹で給湯室に住むハエをあわれと思い、ころしてしまう


MPが(痛いの痛いの飛んでいけ)MPが切れた(痛いものは痛い)


ぼくが血であなたが肉でその中の固いところが青い春だね


脳みそのいちばん甘いところからあなたを食べると決めていました


ぼく以外だれも使わないんだけどシャンプーの上にシャンプーと貼る


内臓が見えててごめん、なんか今日、そういう会って聞いてたんだけど


柿をむく動作も体が覚えていくことのひとつと祖母は教える


安ピンでつついて膿を出すように雨がぼくばかりに当たってる


もしぼくが乗っ取られたらその人をぼくと思って愛してあげて


ちょうちょかと思ったものが木漏れ日できみかと思ったものは、まぼろし


ぼくのため息に揺れてる友人の出産祝いのお返しタオル


やる気製作所に行って当日は二割増しだと言われて、悩む


覗くなと言われたら覗きたくなるし、深淵もきっとそうなのだろう


転んでも転んだことをいいわけにできない、33歳、独身。

2016.10~11

ハンバーガー

うつくしい色のインクの匂いしかわたしの手からしませんように

ざわめきに埋もれて歩く昼食のハンバーガーの切れ端のように

昨日から虫歯がとても痛むので食べやすく切った愛をください

信じてた悲しみだっていつまでもいっしょになんていてはくれない

この外の世界と繋がっていることの確認のためカーテンあける

かけちがえた釦のようにもういちどはずしてとめられないこころたち

カチカチのパン

こまかい雪混じりの風が吹いているあの世もこんな寒さだろうか

人間は甘酸っぱくてかなしくて七という字の腸の短さ

あの人がなんでもないと言いながらモーツァルトを聴いてる夕べ

忘れてはいけないぼくはだれからも愛されないし必要でない

水槽のうえにちいさな星がでて食い付いてみたらカチカチのパン

茫茫とちいさきからだちいさきめでまだあのころを漂流す腸(わた)


パラソル

息をとめそっとあたりを見渡せば生き生きとした吾以外なり

ユーミンの曲がかかって顔上げてみれば車は海岸線ゆく

殺された檸檬が酸っぱいそれだけで自殺未遂をしたくなる朝

だれかの忘れたパラソルの水色の泉触れたいふれたくない

ラヂオから染みだすRCサクセション静かに雪が積もるベランダ

空き缶は空き缶でしかないけれど空き缶になる前かっこよかった