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夜行日和

短歌まとめ

ロングロングスリーパー

ネガだけを集めてぼくだけが住める国を造ろう 黒、黒、黒、黒、

録音はしないで地獄に落ちるから ぶつかっていくこのリフレイン


ぬるぬるのハンドクリーム塗りながらトースターとトーストの間に座る


スプーンもフォークもナイフも要らなくて目玉の一個しかない鳥よ


日本地図のかたちのティッシュをばら撒いて部屋中が日本の夜明け


血管をつたっていったストロベリーショートケーキ、甘くて、無風


友だちに借りた完全自殺マニュアルに勝手に赤線を引く


きみ史上、この扉を直したやつがぼくでありたくて扉を直す


ときどきは振り返りつつ、足下を確かめながらずっと歩いた


だれもいないときにちょっとだけ話す、昔話がしみじみしていい


電子レンジよりもちょっとだけ早く、終わりの合図を止める訓練


生まれてから最初の十五年、その後の十五年、それからの十五年


もう少しいい部屋に住みもう少しいい人になる予定のまま死ぬ


もう少し自分を好きじゃなかったら自分が嫌いと言わなくて済む


住み慣れた町を離れられずにいて生ゴミの日は忘れずに出す


くまのぬいぐるみの棺桶作るため牛乳パックを集めています


湿気てるマッチを一所懸命にこすり続けるような人生


がま口をぱくぱくさせてみたら、ああやっぱり光が欲しいのだろう


波音のようにあなたがぼくの名を呼ぶのでうれしくなってしまった


生きていることに初めて気づいた日、父はパチンコに行っていました


花札と麻雀を小学生に仕込もうとして徹夜した父


水溜まりの中がほんとの世界かも 行ってきますは言わずに行くよ


ぼくたちはロングロングスリーパー 死ぬまで夢を見続けている


"制限のある自由ならこちらです" "制限のない自由はこちら"


死にたみの中で向かい合うふたり、陽は芝生から芝生へ移る


今日の朝、カラスがつついてたやつと同じ弁当を買ってきて食う


大丈夫、二割引いたらこの中のひとりはいないことになるから


友達と飲んでそのまま「泊まってく?」って言われることが自由だったね


走り書きの名前が星に見えてくる 星ってこんな形だったっけ


ただの落下物だった頃にもどりたい 服もお菓子もなにもいらない


ひとりではできないこともふたりならできるし何度もあやとりを取る


会ってただ、言いたいのです 会いたいと言わないことは強がりだって


軽四で泣いたね夜明けが来ないこと祈っていたね二つに折れて


パトカーが通るたんびに「隠れて!」と叫ぶうなじが夜に浮かんだ


髪を染めヒールの高いショートブーツ、デリヘルほんとはやめてほしい


トラックの運転手という男とは、あれから上手くやっていますか?


燃料は夜の街角 満タンになるまで歌を歌いつづける


人間の足はいらない ぼくたちは夢の中では泳げるだろう


猫ばかり描かれたカップにコーヒーを淹れ光より早く走るよ


ほんとうのことはほんとはもういいの 毛布に身体を包んでしまう


この窓は閉ざされるため世界から切り離すため壊されるため


思い出の中だけで咲く向日葵の柄の黄色いシルクのスカーフ


骨を持つ生き物として手を繋ぐことは義務だと思いませんか

2016.11~12