夜行日和

短歌まとめ

凍った惑星(ほし)

近くでは分からないのか離れたらきみの銀河はとても綺麗だ

ぼくたちの命を削る分度器の角度は原始より変わらない

虹だろうか いや、シャングリラ いや、桜 いや、モザイク画 いや、あれはブランコ

破れても力いっぱい震えてる 氷点下の流れ星たち

ぼくはぼく自身の避雷針であり電気を逃がす靴下の穴

脱水中二層式洗濯機を覗く人「何が見えるの?」「何も見えない」

ぼくたちが我慢をしてもしなくても生殖のために生きなくてよい

自分あてに残した覚え書きなぜか哲学めいている寒の入り

おそろしい声ばかりしてひかってるものすべて雨、胃が荒れている

あの人はぼくの凍った惑星(ほし)が好き。おしゃべり/おもちゃ/おしりが冷たい

いつまでもいつまでも工事中の夜が続けばだから泣きたくもなる

公園に埋めた心臓とマスカラ愛していたから殺してしまった

新品のフライパンで鮭を焼けそれは神様からの命令

冷たくて涼しくてもうすかすかで指のすき間に見えるあなたは

裏返ることのないまま青春が終わったひとりでB面を聞く

手の甲を噛みちぎるのはこわいからよだれを壁になすりつけてる

こんな全然おもしろくないぼくをのど飴あげる人に選ぶの

ラーメンが食べたいどうしたんだろうぼくの電気は付いたり消えたり

ぼくのじゃないからぶんぶんぶんぶん振り回す銀色の飛行機の置き物

そうそうぼくぺらぺらなんだもしかして月もぺらぺらかもしれないよ

ハンガーが足りない脱ぎ捨てた昨日たちが死体のように打ち上がる朝

この間、きみに左利きなの、と聞いた気がしたけど夢だった

え、そこで?!というところでエンストをし続けているのかお前は今日も

あ、流れ星、ではなくて未確認飛行物体の白いマフラーだった。

特別なことだと思いたくないしメールの返事は来なくてもいい

アンパンチ アンパンチ アンパンチ アンパンチ アンパンチ (濡れて力が)

温州の甘いやつだけより分けてあとは腐っていってもいいよ

なんなのかよく分からない虫が飛ぶ 払う (よかったほんものだった)

人びとが指さすそっちへ行けということかそれとも未来へワープ

自転車が一台駐輪場にありたったひとつで成り立っている

ぼくの愛した血と肉と生臭いきみの目玉がまわる晩餐

半分は透明で半分は青。僅か1%がぼくら。

左目はぼくの海なのごめんなさい。信じてたからびりびり破く。

そうやって道は分かれていくんだな 急に止まれの看板がある

賢さの種を食べればきみのことわたしのものにできるだろうか

止まれって言われて素直に止まってる場所で素直にシャッターを切る

幸せになってほしいと言われてる気がした 気がしただけでよかった

金縛りにあう直前にやってくる聖歌隊と赤い渦巻き

キーボードの海を漕ぎだす茶碗とかマグカップとかカレー皿たち

さむい日は布団のなかで羽根をもぐあしたはちょっと低く飛ぶのだ

透明な鱗の一枚一枚に書いた水性の愛が溶けだす

パンパンのリュックを背負って歩いてくちぎった夢を目印にする

窓に照る渇いた唇がぼくに生きろと言ったサービスエリア

星の代わり、ネオンの代わりに光る、ぶぶぶ文学を追え、宇宙船

置きっぱのギターが教えてくれました深呼吸することの辛さを

2017.1