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夜行日和

短歌まとめ

すべて正解

暖かいことと光っていることは似ていて回り続ける木馬

月影に隠れて誰も撃てないわ(明朝体の仲間を狙え)

きみの住む惑星(ほし)はどんどん遠くなる時空を越えて殴りに行くよ

さんかく座銀河まで飛んでいくよりはずっとぼくんちのほうが近いじゃん

転落死してしまうほどはしゃいじゃう宇宙生活二年目の夜

最近の流行りは地球のカクテルの名前のついた宇宙猫らしい

マダムロゼ、きみも画面を観てごらんあれがきみの(ぼくの)ふるさと

乾上がった心に水をやりませう(ずるくなくても生きていきたい)

何もかもなかったことにはできません(わたくしは此所に此所におります)

心臓は小さな砂漠と申します(わたくしがそう呼んでおります)

その先は立ち入り禁止に御座います(夢を見るのは貴方の自由)

勇気ある乙女は足を止めません(恐ろしいのは皆同じこと)

守るものがあるから強くなる人と重荷に耐えきれなくなる人と

光指すほうへ恐る恐るゆく「なんだお前か」「来たかお前も」

あなたのは軽そうだよねと言われてもぼくの荷物はぼくだけのもの

一駅ごと一駅ごとに背を伸ばす無機物の銀色の輝き

日本語で車掌に話しかけられるちゃんと日本人に見えてる

マンション群抜けて突如に住宅街-突如に学校-突如に工場

お迎えのある人はみんな嬉しいねぼくは30分後の汽車です

「難波」なぜ難しい波と書くのだろう ただ行き過ぎるだけの人波

朝食は茶碗一杯の白飯と味噌汁、関西弁、関西弁

「次の電車はすぐ来ます」車掌の言葉を信じて待つ すぐ来た

きみが海なら不時着をするときの飛行機の形を次から選べ

夥しい数の郵便受けがあるどれどれひとつ開けてやろうか

朝焼けに選ばし者のように立ち犬におしっこさせている人

深く沈むためだったよねぼくたちが心臓の音数え合うのは

メリヤスで編んだ身体をくっつけて二人でひとつの形をつくる

ぼくたちを真空パックにしてください。永遠に開けないでください。

ぼくらには鳴らせない音五線譜の彼方一番星が鳴りだす

書き置きにふさわしい筆圧探る「今夜パラシュート工場で待つ」

なにもかもうまくいかないきみだけど生きているならすべて正解

どんなものにもあるストーリーきみと選んだというただそれだけでも

焼きたてはおいしいのにな萎んでくホットケーキのようにうつむく

寒いしか言わない友は寒いしか返さぬ我と道を急いで

延々とおなじところを回り続けている腕時計もわたしも

「天国にいる」と言われてを空を見る 眩しくってなんにも見えない

人間は漂白剤に浸けましょう 三週間で大人になります

なにもかも捨てて歩けば軽いかな ちょっと待ってよ、それは要るやつ

涙って零れないんだ流れてくだけなんだって気づくのは夜

午後三時、空は晴天、矢印は成層圏を貫く角度で

まろやかに眠る右脳は溶けだして裸足で駆ける銀河の背中

闇という闇ことごとく撃ち破るスペシウム光線がぼくにも欲しい

今日も過去、明日も過去になっていく 透明になれ わたしの鱗

完全と不完全との間にてどちらでもないものの魚影よ

沈む青の飛沫を食べて生きているならぼくたちは泳ぎだすべき

2017.1.15~1.31