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夜行日和

短歌まとめ

明るい死体

並んでるかなしみに名前をつけようか行列はずっと続いて


光だけ欲しいだなんてわがままねおんなじ量の闇をあげるわ


データバックアップ用にと脳みそをもうひとつ買い"ディー"と名付ける


おもしろいことなんか、ほんとにないよ。魔法が唱えるためにあっても。


お揃いのティーカップが恐ろしいやたらカラフルな夢を見ていた


空き瓶に金平糖をいれてほら、くる人くる人にほら、ほらと言う


いとしさの礫になりて降る夜の亡骸を抱き野道を歩く


月光に取り残された9四歩がらんと暗き盤上に笑む


なんとなく扉を開けるなんとなくきみが歌っているのがわかる


ああ光らなくなりどのぐらい経った小さい星のすみっこで待つ


チョコレートまみれで小麦粉の中に埋もれる/きみに窒息


ベッドには透明な鯨が住んでてぼくの布団を膨らましてて


この部屋は溢れた泡でいっぱいだひとつひとつに知らない漢字


すれ違うだけだった人も来世では深海魚になりまた会いましょう


飛んでいくために広げた翼だが邪魔だといわれ静かにたたむ


飛びかたを忘れた羽根も退化した時おり腕を大きく伸ばす


この骨は退化した翼の跡よそれを使って傘を開くの


なんでこんなに暗いのか、わからない、道をどうして、ひとりで、歩く


耳たぶに触れる10年前開けたピアスの穴はもうここにない


雨に立つカーブミラーの裏側に63年8月とあり


銅像になってしまったおじさんがずっと少しだけ口を開けてる


夕暮れの息苦しさに顔を上げペットボトルの海をひとくち


なにもかもやわらかいのにぼくだけがちがう形の棺を探す


幸せが落ちているかもしれなくて床の凹みをじっと見つめる


懸命に風はそよそよ揺するのにぼくらはよそ見ばかりしている


遠ざかる、釣り人、カモメの嘴、風が走りだすのを待てない


傾げてる首、その裂け目からきみの、新芽のようなもの吹き出して


薄暗いスタッフロールぼくたちのメランコリックの感電死体


15時。退勤じゃないドアを押す。わたしの胸がどかんと鳴った。


異世界への扉ならもっとそれらしくしてなきゃ駄目と先輩が言う


右腕が痺れてる、この前きみが、バケツに海を拾ってきてから


夢の中だけでいいから現れてわたしの光になってください


何もかも無かったことになるのならぼくは角砂糖300個食う


どうせなら晴れた日がいいどうせなら明るい死体になろうと思う


帰路につく天使のふりして途中まで一緒に帰らないって誘った


人になるなりかたなんか知らないさぼくはチキンを頬張るけものだ


噛み砕くチキンがちょっと生ぬるい、生きてるみたいに生ぬるい


致死量の酸素を摂取して眠る痛いから生きてるってわかる


ばりばりばりなにかが裂ける音がして布団の中のブラックホール


貝殻のベッドで眠り明日の朝、女神誕生ごっこをしない?


だって今日が来るのは初めてなんだからなんでもうまくなんてできない


ひとりでもさびしくはないけどそれをうまく言葉にできるだろうか


離れても生きていること返信が来ない葉書を何度でも書く


愛しても愛さなくても消えないよ一緒に居なくても光ってて


ゆっくりと忘れていくねそのうちに居ないってことも忘れるだろう


2017.2.1~2.15