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夜行日和

短歌まとめ

鉄塔、春

擦りきれたスニーカーでも同じ道歩けるけれど音が鳴らない

細長い細長い3階建ての外階段を照らす照明

息苦しさに溺れてく紫の空とイヤリングみたいな月と

咲くときも散るときも黙っていよう桜前線は北上していく

ひたひたに滴るほどの墨をつけわたしはなんと書くつもりだろう

縦線と横線の交わる位置を確かめながら傾いて、春

松の木のように"松"の字は強く、"楽"の字は楽しく笑え

月曜の崩れて落ちる陽光のまたたきのなかに鳩とらわれて

入ってはいけない森の奥ぼくの黒い羊を見ませんでしたか

ゆけ鉄塔ゆけ地平線ゆけ銀河さくらさくらやよいのそらは

世界中どこにもきみがいない朝迎え続けるこれからのこと

真っ黒に塗り潰されてしまうまでなんとか人の形でいよう

やさしいねさくらははなびらの落ちるところにひとしくわたしをえらぶ

性能が劣っていてもかわいくてキレイなものが選ばれていく

こうなれば花びら型の爆弾で春を爆撃してまわろうよ

夢を現像するカメラ買いましたやっぱりきみは写らなかった

知ればもう知らない頃に戻れないジップロックに詰める春風

どくだみの花を目指して生きていく薔薇でも百合でも桜でもなく

ハムスター居なくなってもハムスターまだそこにいるプラスチックの家に

いつまでもこどものように石垣を触っていたい通るたんびに

(もう来るぞ津波が来るぞ)生き残った人が生き残った理由を話す

人は人わたしはわたしきみはきみ 色とりどりの旗を見渡す

二度落ちた自動車免許の帰り道バスで配られる裏校のビラ

探し物はなんですかと歌う母の背は探し物がたくさんある背

本棚から落とされていく本落ちて開いてそして閉じていく本

久しぶりに開けた歌集の真っ白なページの隅に蚊が死んでいる

穏やかに死んでいくため選びとる色鉛筆のパステルカラー

揺れながらぼくの話を聞いている妹の目が段々閉じる

説明の途中で急に飯台の端をピアノの変わりに叩く

実の兄なのに将棋を挑むとき一旦躊躇してからの飛車

実家には実家のルール その実家のルールで暮らす一人だけの部屋

ブックオフには三つ編みも殺人も地獄も魔法学校もある

空想のマリオがぼくのマンションの屋根掛け降りて水中ゾーンへ

欲望のまま終わりたい生きるのも死ぬのも義務では無いと言ってよ

カレンダー、みつを、格言、写真、メモ、前の家主が残した星座

歯磨きをしつつキッチンに座り込み見たことのない傷を見つける

どきどきしてしまうどきどきどきどきしてどきどきしているうちに朝になって

太陽を捕まえにいくきみの乗るうさぎがぼくを追い越していく

酔っぱらい自分で自分の感情に名前を付ける(すごくむなしい)

こんなことなら長袖を着てきたらよかった夢の中をさ迷う

街頭の灯りを月と思い込みどんどん伸びていくぼくの影

ため息は三秒までと決めている四秒越えたらアイスを食べる

生きている限りぼくらは手をつなぐ可能性だけ持って歩こう

脳みそにきれいなものをなにもかも詰め込んでゆく月は大きい

いつもそこにあるもの、スマホTwitter、ドアを開けたら三秒後に、風

なにもかもさらわれていくような夜 月影の端に白い犬置く

手のひらを見ればわかると手相見に言われ手相見の手のひらを見る

赤い星めざして歩けでもそれは朱色のポピー、朱色のポピー

雨の降る確率90%泣かずにノーと言えるぼくたち

未完成絵画の夢を見ていたよイースターにはきっと帰るね

後輩の指差し確認一覧に黄色い爪の燦々と飛ぶ

ときめきは走り続けるためにある段ボールはまな板の代わりになる

ねえ、なんで飛んでいくシャボン玉ばかり見てるの夢の中の飼い犬

この箱になにを入れようアキレス腱を痛めた天使とかかな

おおぞらを紙の魚が泳ぐ夢すこし傾くだけでこぼれる

未使用の愛やお菓子を持ち寄って壊して埋めてきれいなお城

"雨上がりの夜空にと聞いて思い出す夜を増やそう週間"が来る

かわいいを作ろうと思ういつもこの道から見える観覧車とか

音の鳴る花があったらこれはミだつま先立ちで春を踏んでく

殺されたあいつの分も生きている訳じゃないけど弁当に鯖

2017.4.1~4.30  60首